上級な趣味

1999年(平成11年)の10月に、カルチャーセンターのペン字教室に入会した。平日の18:30〜、月に2回ということもあって人数は4〜5人ほど。ほとんどが、個人レッスンのようだった。大変恵まれた環境だと思った。

専用の教科書があり、それに沿って学んでいくのだが、いつも私の斜め前に座る女性は、自由な作品を書いていた。歳は私より3〜4歳下の30歳くらい。もう長く先生のもとで勉強しているらしい。すでに教科書は終えてしまったそうだ。

ある時は、都道府県名の二体を家で書いてきて、先生に見ていただいたうえで、指摘された箇所をお教室でおさらいしていく、といったやり方だ。
12月に入ると、年賀状のパターンをいくつか書いてきて、先生に添削をしてもらって、さらにパターンを変えて、字体を変えて、まさに作品を作り上げていく感じだった。

硬筆書写検定の1級を受験したら?という先生のアドバイスも、笑って「私なんてまだまだ。それにのんびりと書いていたいんです」と言って穏やかにされていた。

彼女は言う。「先生にたったひと言アドバイスをもらうだけなのに、自分の書きたいイメージがグッと膨らむの。で、正しい字形を見たくて、やっぱり字典や教科書に戻っちゃうの」
のんびりと自由作品を書いている彼女の教科書と字典はボロボロだ。セロテープで修復され折り目でヨレヨレで。何百回と手にしてきた証だ。
あ〜こうでなくてはいけないんだな。基礎の修練の賜物が、現在の上級な趣味を作り出しているのだと。

彼女が結婚が決まり、これからはなかなか自由な時間が取れなくなるから、と言って、3月の終わりに「書写検定の1級」を受けると言い出だし、そこから受験対策の勉強を始めたが、見事一発合格であった。蓄積しているものが大きいので何が来ても大丈夫なんだな、と思った。

こういう趣味の付き合い方が私の理想です。


ある時は、文庫本の『新古今和歌集』を散らし書きで書いていた。私には出来ないけど真似で。